読書感想文

ネタバレを含みます。

『ゆめにっき』

ツイッターの相互さんが、ゆめにっき派生ゲーム「YUMENIKKI DreamDiary」の実況をしていたので、その原作「ゆめにっき」の感想を書きます。


ゆめにっきとは、ききやまさんがグラフィックから音楽まですべてを手がけたフリーゲームです。
PCがあれば誰でも遊ぶことができます。

しかしそのボリュームは無料とは思えないほど膨大。
プレイヤーは窓付きという少女を操作して、彼女の夢の中に入り、広大で複雑な夢の世界を探索していきます。 



ジャンルはホラーに分類されているのを見かけます。
確かに追いかけっこ要素やスプラッタ描写はあるのですが、とにかくマップが広大ですので、そういった場面はほんの一部ですし、最悪避けてしまっても散策ゲームとして十分プレイできます。





このゲームの革新的なところは、目的がないところです。


最近ですと「どうぶつの森」が話題で、こちらも終わりがなくどう遊ぶかはプレイヤー次第なゲームですが、それでも「借金完済」や「収集要素のコンプ」などそれとなく提示される目標はありますし、達成度に応じてそれなりの対価がもらえます。

いくら目的がないといえど、製作者の「こう遊んでほしい」という意図をプレイヤーがそれとなく読み取れるわけです。




しかしゆめにっきは全く違います。

作者がこの膨大なボリュームのゲームを通してプレイヤーに何を伝えたいのか、全くわからないのです。

ホラーゲームや精神崩壊ゲーと名高いゆめにっきですが、プレイしていても、怖がらせよう、鬱にしてやろうといった意図は感じられません。ききやま氏が一番面白いと思うゲームを作るとこうなるのだ、それがたまたまホラーに分類されただけなのだ、と感じます。私はこのゲームのそういうところがとても好きです。

このゲームは攻略や実況を見ずにやるのが一番面白いと思うので、未プレイの方はぜひ初見で、この不気味で孤独で広い世界を散策してみてください。




ききやま氏ホームページ(ゲームのダウンロードのリンクもこちらにあります)
http://www3.nns.ne.jp/~tk-mto/kikiyamaHP.html



またこのゲームを遊ぶにはRPGツクール2003版のインストール(無料)が必要になりますので、その手順はこちらを参考にしてください。
https://dic.pixiv.net/a/%E3%82%86%E3%82%81%E3%81%AB%E3%81%A3%E3%81%8D

【2023/01/12追記】

現在はスチームからRPGツクールのインストール不要で遊べます。
Yume Nikki on Steam
ブラウザ版もあるみたいなので気軽に遊んでみて下さい。

【追記終わり】








ここからネタバレを含みます。









このゲームでは、「ほうちょう」というアイテムが手に入ります。

かなり暗いマップにあるアイテムで見つけるのが困難なので、初見の場合、入手したのはかなりプレイしたあとだった、ということもあるかもしれません。


このアイテムを入手した途端、このゲームの遊び方は180度変わります。



ゆめにっき世界のモブは、基本的に会話してくれません。
話しかけても無視や、無意味な機械音が流れるだけ。反応があるだけマシで、意思の疎通ができるキャラはいません。

これまでそんな世界をただ一人で歩いてきたプレイヤーが、包丁を手にしたら、どうすると思いますか?






刺してみたくなるんじゃないですか?





何をしても、どうせこれは自分の夢なのだから。







このアイテムを手にした途端、おそらくほぼすべてのプレイヤーは、生き物の形をしたオブジェクトに次々と襲い掛かっていくことになります。

決して殺したいわけではなく。

反応が欲しくて。
変化が欲しくて。
ただ歩き回ることしかできない、喜びも悲しみもなく、誰に話しかけても何も返って来ない世界が変わるんじゃないかと。
自分がここにいることに周りが気づいてくれるんじゃないかと。


しかし、可愛い女の子を刺しても、無抵抗な生き物を刺しても、悲鳴を上げて消えるだけ。

周囲のモブは相変わらず窓付きを無視。

生き物を刺すなんて悪いことをしたのに、怒られも、捕まりもなじられも罵られもしないまま、再び薄暗い部屋で夢を見るだけの日常に戻ってしまうのです。

これを絶望と言わずに何と言うのでしょうか。

包丁を手にした数多のプレイヤーが、どんなに希望を抱いて最初のモブを刺したことか…そしてそれがただ消えただけだったとき、どれだけの罪悪感と虚無感を抱いたことか…

この「殺すこと」に対する虚しさは、他のゲームではまず味わえないと思います。


数多くのファンがいる人気のゲームですので、未プレイの方はぜひやってみてくださいね!