読書感想文

ネタバレを含みます。

『ミスト』

胸糞名作として名高い本作。

画家として生活している主人公デイビッドはある日息子を連れてスーパーに出かけると、外に謎の霧が立ち込めてくる。そこへ店内に駆け込んでくる血を流した男性。どうやら霧の中に怪物がいるらしい……。

ある者は外の空調設備を直しに。ある者は外に助けを呼びに。ある者は車内の武器を取りに。次々とスーパーから人が出ていっては死んでいく。店内ではカルトおばさんがカルトな演説で生き残りを先導し始め、自分に従わないデイビッドの息子をモンスターへの生贄に捧げるとか言い出す始末。もう大パニック。

多数の犠牲を出しながらなんとかスーパーから脱出したデイビッド、そして息子ビリーの運命は……




モンスターが現れて人を次々食べていく、という映画は数あれど、ここまで胸糞が悪くなる映画があるんですね……。

高ストレスな状況に置かれた人間が狂っていく過程の描写が非常に丁寧で、安全圏から観てる私はそれが狂気だとわかるけど彼らは至って大マジメなのだというのが理解できました。


怖かったのが、籠城派だった主人公が外に出たがりだしたところ。

泣いて嫌がる息子を置いて薬局に行くと言い出したとき、ああ、この人はもう正常な判断ができないのだと……戦慄しました。

大やけどを負って死にかけている人間に薬をつけて何になりますか。延命にもなりませんし、無駄な死人を出すだけなのは彼らより前にスーパーから出ていった人たちの末路を見ていれば火を見るより明らかです。

それからは彼らが助かる未来が見えなくて観てて辛かったですね……する判断すべてが破滅に向かっているので……。

終盤は皮肉な展開のオンパレードで、「もうやめて!デイビッドのHPはもうゼロよ!」って感じでした。


私としては、誰が正しいとか無かったんじゃないかなぁと……。
全員、自分の信念の中で最善の行動をとろうとしていたと思います。自分だけじゃなく、自分の大切な人も救うためにと、あの場にいた全員その気持ちだけは確かだったはずです。

生き残ったからその判断が正しかった、死んだから間違ってた、なんてのはナンセンスです。現実ではやってみなければわからないのです。

もし私は現実に人食いモンスターが現れたら絶対に外に出ないようにしようと思います。